マニュアルとは何か

「マニュアル」は「手引き、取扱説明書、手順書。自動車で手動の変速機」などとあり、もともとはラテン語の「手(manus)」から派生している言われています。

マニュアルはなぜ必要か

組織は「役割」と「調整」のため存在するのですから、特定の人は関係なく機能しなければなりません。組織を構成する全ての人がいなくなっても組織は存在します。

すべての職務が文書や管理者の記憶に記録されていることで新たなメンバーに引き継ぐことが可能にならなければ健全な組織とは言えません。

組織は職務で構成されています。その職務にマニュアルが整備されていなければ、属人化に依存せざるをえなくなります。

マニュアルの本義

マニュアルの本義は職務の客観性を向上させ、仕事の効率を向上させることにあります。

マニュアルへの成文化

マニュアルは、成文化した時点で内容はフリーズしていますが、職務は状況に応じて変化しています。よって、定期・不定期に見直す必要があります。状況に変化がなかったとしても会計年度末に1回は見直しをすることが望まれます。

見直しは、職務担当者と上司を交えて行う必要があります。上司は職務を代替できる必要があります。それぐらいでなければ教育指導や管理はできません。

また、成文化できない暗黙知の扱いにも配慮しておく必要がありますし、例外処理や想定外への対応も可能な限り記載しておくべきでしょう。

マニュアルの種類

マニュアルの使用者が、社内か社外かで作り方が変わることは当然のことです。

ここで取り上げるのは「職務マニュアル」なので、社内利用に限定しています。よって、社内で作成することを前提とします。

マニュアルの作り方

マニュアルは職務に従事している人を中心にして、その職務を管理している上司を交えて作成しましょう。つまり、外部の制作会社に依頼するべきものではないと考えます。見やすさやノウハウがどうこう言うけれど、それは使っている中で改定していくことで、いずれは収斂していくはずだと考えています。

MS-Wordのアウトライン機能で作ることを前提に、階層は3階層までとして話を進めます。手書きでスタートするべきだとか、いろいろな意見がありますが、アウトライン機能に馴染めば「考える」ことにも、そして「作成する」ことにも、メリットは多大です。

MS-Wordのアウトライン機能の使い方は、こちら(↓)の記事を参照してください。

業務と職務

「業務」と「職務」という言葉が明確に定義されていません。辞書で調べると「業務=business」で「職務=job」と訳されています。つまり、「業務」のほうがくくりは大きく、何をくくって統括しているかというと「職務」になります。

よって、まずマニュアルにするべきなのは、個々の「職務」だと言えるでしょう。

部や課や係・グループはいくつかの「業務」を担っています。その業務のミッションを果たすためにいくつかの「職務」で対応していることになります。

そこで作成するべきなのは、「業務」と「職務」の体系図になります。職務を細分化しすぎると収拾がつかなくなるので、管理単位をどのようにするかは、職務の担当者と上司とで協議して決めていきます。

業務単位に職務フローを図式化するとマニュアルの改定管理のみならず、業務と職務の体系を図式化することができます。この段階で、業務と職務に名称とコードを付与しておきます。

コード化のワンポイント

組織コードに付随させて業務コードをアルファベット(a~z)を当てます。職務コードは「010」から「990」までを当てていきます。900番台は緊急対応に当てておくようにすれば、他部門とも共通認識を持てます。末尾に「0」を当てるのは、職務が増えたり、分割した時に使うために使用します。

作業ノートの位置づけ

組織的に使うものを「マニュアル」とするなら個人的に使うものを「作業ノート」と呼ぶことができるかもしれません。しかし、組織に従属している以上、なおかつ、職務遂行のために必要であるならばマニュアル化しておくべきです。

内容の確認は、作業ノートを書いた人ではない人に、作業ノートの客観性を確認してもらい、コード化して業務に位置づけるようにしていきます。

マニュアルの形態と書式

マニュアルは改定が容易でなければなりません。そのためには、使い慣れているMS-Wordを使うべきでしょう。表はExcelを使って、画像化して張り込むか、リンクで張り込みます。

オリジナルファイルの所在の管理をしっかりとしないと改定が反映していなかったり、表データのExcelを探さなければならなくなったりしてしまいますので、ルール化しておきましょう。

階層は3階層までとし、見出し1~3を使いますが、それぞれの書式やフォンとも社内で統一するようにします。そのためにはテンプレート化しておきます。

スマホでの使用を考えるのであるなら、PDFにするよりHTMLにすることを検討します。

用語・用字の統一

用字に関しては気が付く都度に統一していけばいいと思います。用語は、社内で統一しておかないと思わぬ誤解を生じることもありますので、辞書を作成して共有していく必要があります。

用語は、随時増えてくるので、辞書のメンテナンス(見直し等)や追加・改定・削除の都度のアナウンスが必要になります。

例えば、文書管理において「保存」「保管」「保有」などが混在されていることは珍しくありませんが、きちんと定義しておくことで混用されることから回避することができます。

記載するべき事項

その職務の必要性、目的、目標。関連する他の職務。法令・社内規則。

手順、留意すべき事項。

改定・見直しの履歴。改定・見直しに立ち会った担当者名など。

例外処理や緊急対応の発生の可能性によっては、連絡系統などを明記しておく。

必ずやらなければならない事項についてはチェックリストを用意しておく。チェックリストは担当者だけがチャックするのでは形式化してしまうので、第三者の確認も必要とする。

電子化

電子化するのであれば、MS-WordのHTMLではレスポンシブにならないので、Markdownにフォーマットを変換してからHTMLにすることをお勧めします。

スマホでの使い勝手を考えるとアコーディオンメニューにするなど検討してください。

注意点

マニュアルのためのDITA(Darwin Information Typing Architecture)というXMLの規格があります。DITAに対応するためには、それなりの教育が必要になります。

DITAに対応するためのコストに応じたメリットがあるのかを検討することをお勧めします。

かつてSGMLという構造化文書が浸透するかと思いきや、思うほどに浸透しなかったように記憶しています。大きな原因は、業界で共通のルールを作成するというような壮大な目標があるとか、軍艦や原子力発電所のマニュアルのような膨大なマニュアルに膨大な予算を投じて作るようなことでもない限り、まずは、マニュアルを作るところから始めるのが最良だと思います。

さらにいうと、日本の文章で「構造化文書」を必要とする場面は、思うほどにはないような気がします。そこで、まず、MS-Wordのアウトラインで見出し1~3という階層化から「構造化」に取り組むのが現実的だと考えています。