02.「文書管理」を組織から考える
「Job Description」は、日本語では「職務記述書」と訳されるのが一般的なようです。
「職務」に対して人材を雇用するわけで、「職務」は明文化されていなければなりません。
参考のため、実際の欧米企業におけるJDの例を加工してみました。
求めている職種は「Quality Assurance Engineer」、つまり「品質保証エンジニア」です。
冒頭で、最前線で最先端のテクノロジーに関われるメリットを謳い上げます。さらに、社内での部署異動によって、いろいろな分野に関わるチャンスが与えられることもメリットとして謳い上げます。
一緒にテクノロジーで革命を起こすような作業に関わりたければぜひ参加してほしいと訴えかけます。
【職務】
- ソフトウェア製品からバグを除外することに責任を持つ。
- テスト計画に責任を持ち、テストレポートをプロジェクトに配信する。
- 自動化ツールを開発し、ソフトウェア開発とプロジェクトプロセスの効率に責任を持つ。
- プロジェクト管理プロセスに参加して、効率と品質の側面を最適化することに寄与する。
- 要件、設計、および開発の段階に参加し、チームをサポートする
- 特に「品質責任」を定義することが主要な職務となる。
- 開発ツールを改善することに有益なアドバイスをする。
- 高度なテスト方法とツールを作成し、プロジェクトに展開する。
【資格要件】
- テスト開発における少なくとも3年の経験(ISTQB:国際ソフトウェアテスト資格認定委員会の証明書が望ましい)
- ホワイトボックステストの経験があり、C ++またはPythonが得意であること。
- 様々なテストフレームワークの実装の経験があること。
- Jenkins、GitLab、GitHubなどが自在に扱えること
- CI / CDパイプライン実装の経験があること。
- バグ管理システムに精通していること。
- 優れた作業規範を身に付けていること。
どれひとつとっても、かなりな専門性が求められます。さらに、優先すべき資格要件が提示されます。
【優先すべき資格要件】
- AIチップセットのSDK開発の経験があること
- AWSなどのクラウドサービスなどの経験があること。
- OSの仮想環境に精通していること。
- データベースとフロントエンドの開発に長けていること。
- プロジェクト管理、アジャイルプロセスや旧来からのプロセスに関する知識があること。
- 論理思考が得意で、細部に気を配り、長期的なシステムソリューションを考えられること。
これらのことをクリアできそうならば「応募」することができます。
資格要件に関してはエビデンスを示す必要があるでしょう。そして書類選考をパスすれば面接になり、合格すれば晴れて「雇用」になるというのが「Job Description」による雇用です。
雇用されれば、すぐに実戦配備かと言えばきっとそうではなく、それぞれの項目に対する詳細な「マニュアルが用意されている」はずです。
これらのドキュメントを組織として完備するのが「文書主義」になります。
このように、雇用に対する募集条件を明記した文書による雇用形態を、欧米では「Job Description」による「雇用」の方式と言えます。
これでも少し省いてありますが、これだけのことが、どこかの企業でキャリアとして積み上げることができれば、さらに有利な条件で雇用してくれる企業で先端の技術や知識を獲得するために異動(流動)することを厭わないわけです。
よって、なぜ、文書主義を徹底するかといえば、優秀な人材は常に「流動している」からといえます。
当然のこととなりますが、人が流動するということは知り得た情報や経験に対しての知財に関する細かな約束も、きちんと明文化されていて、この細かな条項に対しての承諾も契約内容となります。
終身雇用に慣れている日本型労働者には、かなり厳しいのではないかと思いますが、これからの若い人たちの就業環境は、徐々にではあれ、こうしたことが徐々にではあれ普通になっていくのでしょう。
その前に、こうしたことを言い出す経営幹部や中間管理層の入れ替えから着手するのが順序のような気もします。年功で管理層にたどり着いた多くの人は、管理能力よりも「年功」による調整能力に依存するわけで、企業価値を上げるための役割を担っているという自負も希薄な場合も少なくない気がします。
「文書管理」と言う視点から考えてみると、「職務」を実施するためには明文化された「マニュアル」が不可欠になります。なぜなら、客観的な判断ができなくなるからです。
ただ、「マニュアル」と言う言葉を使うと、各方面でいろいろなことを定義している向きもあるので、ワードクラフトの造語になりますが「Job Procedure」、日本語で「職務手順書」が必要になります。
こうした類の文書をワードクラフトでは「組織規定文書」と呼びます。
職務を遂行すれば、電子化文書であれ紙の文書であれ、職務に付随して文書が(ほぼ、確実に)発生することになります。
日々発生する、これらの文書を「組織発生文書」とよび、一般的に文書管理と言うとこちらの種類の文書を管理することを主眼としていると思います。
職務に付随して発生する組織文書の管理手法(考え方)をワードクラフトでは「頓活」と呼んでおり、これを支える仕組みを「iDMS(挑)」と言う名称で展開しています。
組織を構成するのは「職務」にあるという考えを前提に文書主義を俯瞰し、その実現を支えるのが「頓活」と「iDMS」であるというのがワードクラフトの文書管理に対する考えです。