02.「文書管理」を組織から考える
「ジョブ型雇用」と言う言葉を最近目にする機会が増えています。
「ジョブ型雇用」をGoogle翻訳で英訳すると「Job-type employment」のようになりますが、この言葉が欧米で通用するのかは不明です。
通用しないようならば、「ジョブ型雇用」と言う言葉そのものが日本固有の造語なのかもしれません。
「ジョブ型雇用」の前提は、各職務がきちんと設計されており、職務内容が明文化(Job Procedure:職務手順)されている事が前提になります。
「ジョブ型雇用」と言う言葉は、おそらくアメリカにおける「JD:Job Description(職務記述書)」に記載されている内容に適合する人材を採用し雇用契約を結ぶという流れを「JD」としてでは伝えられないと考えた人が編み出したのだろうと邪推しています。
組織を職務で構成し、個々の職務は明文化(Job Procedure ← こういう言い方は特段していない)されていることが前提で、その職務に適合する人材を雇用することが「ジョブ型雇用」の原則になります。
これを実現させているのは欧米における徹底した「文書主義」の上に組織が成り立っていればこそになります。
もっと冷めた言い方をすると、組織は「ジョブ」で構成されており、「ジョブ」がきちんと明文化されていて、管理者がちゃんと管理できているならばメンバーは入替(流動)可能であるのがジョブ型雇用における組織の在り方になります。
「ジョブ型雇用」と対極にある雇用形態とされているのが「メンバーシップ型雇用」と言われる雇用形態だそうですが、普通には「終身型雇用」といったほうがわかりやすいでしょう。
日本では従来から「年功序列型」と言われてきた雇用形態で、新入社員で入り、各部署を異動しながら経験を積み、人脈(人間関係)を作り、組織文化を体得していく形態で、長く務めることで給料も加算され退職金も積み増されていくし、それなりに昇進もしていく。
かつ、一つのところに長く務めることが美徳(かつメリット)とされてきた背景があります。
「転職」というと日本では抵抗感があるのも、一つには積み上げてきた各種の便益を放棄することと、転職先の組織文化に馴染むのに要する努力などを考えると、多少のメリットでは動きたくないのも当然のことと思います。
余計なお世話ですが「現在の職場が嫌だから」転職するというのではなく、「自分をもっと開花させる」「自分の能力をもっと発揮できる」から転職するということが欧米の「JD」には込められていると思います。
「ジョブ型雇用」のメリット・デメリットについてはあっちこっちに似たような記事がたくさんあるので興味があれば参考にしてみてください。
凡愚の私見では、社会の価値観の変容は徐々に流動的になっていくのだろうと思いますが、特殊な技能を前提にした転職でもない限りは、得失だけでの転職は、当面、日本社会では時期尚早な気もします。
余談ですが、「ジョブ」と言う言葉に似たニュアンスの言葉に「タスク」があります。ネットの解説などを調べてみると「ジョブ」には「特定できる職業」のようなニュアンスがあるようです。
それに比べると「タスク」は、「マルチタスク」などにも使わるように、仕事を要素単位にコマ割りした、その一つ一つの要素のようなニュアンスに使うようです。さらには、「義務」のような雰囲気も付いているような気もします。
結論から言えば「ジョブ」でもなく「タスク」でもなく、普通に日本語で「職務」とすればいいように思いますので念のため書き添えます。
ただし、職務を明文化したドキュメントは日本語で「職務手順書」、英語では「Job Procedure」がよさそうです。