0207.この章のまとめ

02.「文書管理」を組織から考える

知的文書管理とは「スタック&シェア」に尽きるというのがこの章の結論です。

適正な「蓄積」と、効率的な「共有」。この二つが完備されていることが強靭な「集合知」を形成することは間違いがありません。

しかし、「蓄積」と言っても単に貯め込むだけでは邪魔なだけです。「共有」といったところで方法が定まっていなければ生産性のある共有には程遠いでしょう。

難しいことから始めるのではなく、組織文書を単純化して、2種類あることから始めるのがこの章の狙いです。


つ目は組織を形作り、規定し、継承し、発展させるために不可欠な文書。これを「組織規定文書」とします。

組織を規定するマニュアルや作業標準書などが包含されます。

※ 「マニュアル」と言うといろいろな定義や解説があって、その理解に手間と時間を取られてしまいます。誤解を避けるためにワードクラフトでは「Job Procedure」、つまり「職務手順書」という欧米では使われていない用語に「職務マニュアル類」「操作マニュアル類」「作業標準類」「取説類」「教材類」などを包括した、職務を形づけ機能させるために必要な文書を総括して「職務手順書」と称しています。

必要なことは、組織で行われるすべての「職務」を明文化することです。

つ目は、組織活動をすることで発生(作成・収受)する日々の文書、これを「組織発生文書」とし、日々発生する組織文書は、組織を規定するために明文化した「職務」のいずれかに付随させることが最初の一歩になります。

文書には性質があって、その性質に応じた管理と保存が必要になりますが、それについては次章の「頓活」に譲ります。


これらに取り組み、実践していくことをワードクラフトでは「文書主義」と称しています。

文書主義として不可欠な文書に「契約書」があります。

契約書に関しては法律の規定があるので、内容に踏み込むことは回避しますが、契約の内容もさることながら、契約の期日管理も重要な文書管理の対象になります。

知財管理」なども「文書主義」の上に成立するものですが、こちらは「知的財産管理技能」として国家検定があるようなので、内容についてはそちらにお任せしますが、ポイントは「スタック&シェア」により前例との整合性を保ちながらも、単なる「知的財産管理」にとどめるのではなく、新たな「知的財産」を生み出せるような管理手法が不可欠だと思っています。

思ってはいますが、「共有」をどのように実現していくかは仕組みだけの問題ではないと考えています。

10年ほど前に作った文書管理の仕組みでは、そのようなことまでカバーしようとして「虻蜂取らず」になった経験があり、結局は、ベーシックな文書管理をきちんと行うところから始めなければ、その先は無いと身に染みた経験があります。

一昔前に「ナレッジ」とか「暗黙知を形式知に」などという掛け声が慌ただしかった頃の思い出です。


2022.3.17 追記

外資にいて海外案件のコンサルタントをしている知己からメールをもらいました。

かれが、かつてヘッドハンティングされていたアメリカの大手企業での、ちょっとした最新動向を教えてくれました。

その企業の最新のシステムのポイントは「熟練作業者の必要性を減らし、コストを最小限に抑える」とセールスポイントとして公言していることです。

AI」や「ロボット」、そこまでいかなくても「RPA」のようなものがどんどん進化してくればOrdinary People の職域はどんどん狭められていくことは必至です。

漫然と職場でワーカーしていると、これからの先行きが大変なことになる可能性が高まっています。