「古典」と聞くだけで、身構えてしまう人は多いと思います。高校の授業で読んだ古文や漢文が、逆に、つまずきの原因になっている方も多いでしょう。
文法や単語を覚えることに必死で、内容を楽しむ余裕がなかったかもしれません。でも古典は本来、もっと自由に、もっと気軽に「内容」や「雰囲気」を楽しむものです。
この記事では、古典が苦手な方に向けて、無理のない付き合い方を紹介していきます。
なぜ古典は「難しそう」に見えるのか
まず、なぜ古典に苦手意識を持つ人が多いのか考えてみましょう。一番の理由は、学校教育で「正確に読み解くこと」が求められてきたからです。
千年もの間に言葉は大きく変化しており、文法は大きく変化しており、今では全く見ることもない用語や、さらには当時の時代背景の違いなどを知ることなしに、文章のみの解釈にはそもそも無理があったと言わざるを得ません。
平安時代に開花した和歌なども源流は文字を持たない時代までさかのぼれそうです。恋や悲しみ、時間の移ろいを、当時の庶民ですら31文字で表現するという日本語力があったわけですが、わずか31文字という文字空間に凝縮された表現を理解するためには、相応の日本語力が求められてしまいます。
まして、漢文となると原著者は当然のことですが中国語として書いているものを訓読しなければならず、漢字の読み方がわからないとそこで止まります。そのうえ、当時の中国の語順と日本語の語順では大きく異なっており、それを訓読するためにはパズルを解かなければならないという障害もあります。
こうした経験が重なることで、「古典・漢文=難解でつまらないもの」という思い込みが刷り込まれてしまいます。
そこで忌避することとなりますが、これは古典そのものが持つ魅力やパワーを享受することをも拒否してしまうことになります。
完璧に理解しようとしなくていい
古典を楽しむうえで、まず手放してほしいのが「完璧に理解しよう」という気持ちです。高校時代のようなテストがあるわけでもないので、自分なりに先人が書いた意図を正確に汲もうとするのではなく、自分なりの考えを照らし合わせるような読み方をすればいいだけのことです。
大まかなストーリーや、登場人物の気持ちがつかめれば、それで十分であって、わからない部分は、そのまま読み進めてしまえばいいのです。
重要なポイントは、雰囲気を感じ取りながら読み進める感覚になります。千年前の人々の知性や思考方法を感じられれば、現代を生きる我々にも参考にするべき点は多々あります。
「わからないところがあってもいい」と思うだけで、心理的なハードルはぐっと下がります。古典との距離を縮める第一歩は、この完璧主義を手放すことから始まります。
現代語訳から入るという選択
古典が苦手な方に、特におすすめしたいのが現代語訳から読み始める方法です。原文にこだわらず、まずは物語の内容を日本語で自然に理解することを優先しましょう。
現代語訳であれば、まるで普通の小説のように、スムーズに読み進めることができます。「源氏物語」や「枕草子」なども、読みやすい現代語訳がたくさん出版されています。ただし、原文併記であったり語彙解説があるような解説書であるほうが先々においても使い道があるので、あまりくだけたものではないほうがいいでしょう。
まずはストーリーを楽しみ、興味が出てきたら少しずつ原文に触れてみましょう。
順番を逆にする必要はなく、興味のあるところから始めれば良いのです。この方法なら、古典特有の言葉の壁を、最初から気にせずに済みます。
短い作品や一節から始めてみる
いきなり長編に挑戦すると、途中で挫折してしまう可能性が高くなります。
一つの句や歌の背景にある情景を、想像しながら読むのもいいのですが、いきなり和歌から入るのはお勧めできません。確かに三十一音の中に、豊かな世界が広がっていることに認識を新たにすることは確かですが、やはり人物が登場し、そうした人間関係の中から様々なストーリーが展開するほうが読みごたえがあります。
気に入った一節だけを繰り返し読むという楽しみ方も、立派な古典の味わい方です。「徒然草」のように、短い章段が連なる作品も、少しずつ読み進めやすい構成です。
一日一段だけ読む、というペースでも、無理なく古典に触れ続けることができます。いまなら、AIが使えるのでちょっとしたひらめきをイラストや動画にするようなプロンプトを作りながら読み進めるなんてのも面白そうです。小さな成功体験を積み重ねることが、苦手意識を克服する近道になります。
自分の好きなテーマから探してみる
古典と一言でいっても、恋愛、戦い、自然、人生観など、テーマは多岐にわたります。まずは自分が興味を持てそうなテーマから、作品を選んでみるのがおすすめです。
恋愛模様が好きなら「伊勢物語」、戦いの物語が好きなら「平家物語」が入りやすいでしょう。
自分の好みに合った作品なら、多少読みにくくても興味を持って読み進められます。古典というジャンルではなく、一つの物語として楽しむ視点を持つことが大切です。
好きな漫画やドラマの原作が、実は古典だったというケースも意外と多くあります。そうした身近な作品から、古典の世界に入っていくのも良い方法です。
あるいは、いっそ、古典を自分なりに現代風にアレンジしてみるなんてのも意外と面白いかもしれません。
古典を「教養」ではなく「娯楽」として捉える
古典に苦手意識を持つ背景には、「学ばなければならないもの」という重圧もあります。たとえば「今昔物語集」の世俗に関する話題などは、庶民の姿を彷彿とすることができるという、貴族や武士の日常とは違う人々の営みを読み取ることができます。
恋愛のかけひきや、ユーモアあふれるやりとりなど、面白い要素がたくさん詰まっています。現代のドラマや漫画を楽しむのと同じ感覚で、気軽に読んでみて構わないのです。
知識を増やすためではなく、単純に物語を楽しむために手に取ってみましょう。その方が、結果的に古典への理解も自然と深まっていくものです。
まとめ:小さな一歩から古典と付き合ってみよう
古典が苦手だと感じるのは、決して珍しいことではなく、多くの人が抱える悩みです。完璧に理解しようとせず、現代語訳や短い作品から気軽に触れてみましょう。
自分の好きなテーマを選び、「教養」としてではなく「娯楽」として捉え直すだけで、古典との距離はぐっと縮まります。
今日紹介した方法の中から、気になるものを一つだけ試してみてください。小さな一歩の積み重ねが、いつしか古典を身近な存在に変えてくれるはずです。
自分のペースで、無理なく古典との付き合いを続けていきましょう。